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信念を武技に変える

■ 型稽古の内観 ■

 武術や精神修養の分野においては、「内観(ないかん)が重視されます。
 内観とは、自分の意識や肉体の状態を観察することを言い、第三者的な視点で自分を見つめる行為です。煉誠塾が指導する自己観行も、この内観の一種と言えます。

 人間の心や体というものは、複雑な仕組みによって保たれています。ですから、何気なく生きているだけでは、その動きを把握することは困難ですし、また、自身の行動や感情が「何によって引き起こされているのか」という因果関係についても探ることが出来ません。

 自分という存在は、自分が思っているほど従順な存在ではないのです。人生経験を積み、様々な困難や苦しみに直面する度、心は卑屈になり、本来の輝きを覆い隠していきます。

 その最たるものが、心が勝手に作り出す「嘘」の類です。自分を守るため、虚栄心のため、利益を得るため、見たくないものを覆い隠すため。心はごく自然に、自分自身に対して嘘をつきます。内観に未熟な者は、その嘘をあたかも真実だと思い込み、現実をありのままに受け取ることが難しくなります

◆仕事が失敗したのはあいつの責任だ。
→自分の能力と努力が足りなかっただけ

◆わたしは心の底からあの人を愛している。
→自分の空虚感を満たすために相手を利用しているだけ

◆俺は賢くて価値のある人間だ
→何の根拠もなく、自分の弱さを認識するのが怖いだけ

 心には、自分が見たくないものを自動的に覆い隠す機能があります。自分勝手な都合や体裁の良い言葉を巧妙に選び、都合の悪い真実を隠してしまうのです。

 内観をせず、心が作り出す嘘を鵜呑みにして生きている人は、思い込みと自分勝手な幻想で作り上げた嘘の世界を生きているだけ、ということになります。そんなことでは、他人を幸せにするどころか、自分をコントロールすることすら不可能です。

 心はごく自然に嘘をつく。捏造と欺瞞と思い込みが得意な、パターン化された「嘘製造回路」が備わっていることを知って下さい。
 人間として正しい生き方を模索していこうと志を立てた者は、このような嘘を見破る技術を身につけることが急務となります。

 内観は、日常生活でも行うことが出来ますが、武術の型稽古においても非常に有効です。
 自分の体の動きを逐一見つめながら、第三者の視点で技術を確認していく。そうすることで、自己を認識する能力が少しずつ高まってきて、心の嘘や、肉体の身勝手な反応に気づけるようになってきます。

 そこで大切になるのは、未熟な自分の技量を、ありのままに見つめ受け入れることです。自分の駄目な部分から目を背けたくなるのは誰でも同じですが、自己弁護を繰り返しているだけでは、いつまで経っても解決策は出てきません。

 武術の型稽古は、組み手やスパーリングなどと違い、敵を倒すことよりも、自己の内面を重視します。より深く自分を掘り下げ、濃密に動きをトレースしていくことが可能です。

 自分の心の状態はどうか? 恐れていないか? 混乱していないか? 肩に力が入っていないか? 緊張していないか? 照れていないか? 丹田は充実しているか? 脱力出来ているか? 膝が固くなっていないか? 呼吸は乱れていないか? など、内観の対象となるポイントは、いくらでも見つかります。

 型稽古は、主に自身の内面を掘り下げていくために行いますので、勝敗にこだわることなど一切ありません。自分でテーマを決め、少しでも納得出来ればそれで良いのです。

 武技を習得するために型稽古を行うのは当然ですが、それと平行し、心を観察するための負荷として用いるのが大切であると煉誠塾では考えています。


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